SOUNDPEATS Air3 Proレビュー 。ぼやけた中音域をイコライザ調整でどうにかするANC対応完全ワイヤレスイヤホン
SOUNDPEATS様のご厚意で、2022年1月発売の「SOUNDPEATS Air3 Pro」をレビューさせていただけることとなりました。
SOUNDPEATS Air3 Proは、6000円台のANC搭載完全ワイヤレスイヤホンです。
その特長は3つ。
- SOUNDPEATSにしては珍しいフラットサウンド
- -35dBの実力をしっかり発揮するANC
- こだわりを感じるケースデザイン
肝心の音質は、正直いって好き嫌いが分かれそう。ぼやけているわりに音量が大きな中音域が、優れた高音域と低音域の良さをかき消しているためです。
イコライザで音量調整すれば対処できるものの、工夫が必要な時点で万人向けではないな、と。
自分なりの音作りに抵抗がない人にとってはコスパの良い機種ですが、人を選びそうです。
SOUNDPEATS Air3 Proが気になった理由
SOUNDPEATSの音作りが好きだからです
SOUNDPEATSの音は、分解能や粒度感が重視されています。ぼくの好みにばっちり。
なので毎回、SOUNDPEATSの新作にとても期待しています。
今作のAir3 Proは、前作のAir3の後続に当たるもの。
インナーイヤー型の Air3では、SOUNDPEATSならではの音の表現が仕切れなかったため、「Air3のカナル型があったらいいのにな」と評しました。
Air3 Proは、ちょうどそれを実現したものにあたるため、個人的にはとても期待しています。
VGP2022金賞とコスパ大賞をダブル受賞していることも期待値を高めます
SOUNDPEATS Air3 Proの概要
注目ポイント
- VGP2022金賞とコスパ大賞をダブル受賞
- ハイブリッドアクティブノイズキャンセリング
- Qualcomm3046チップセットとBluetooth5.2バージョン
- バイオセルロース振動板付きの12mmダイナミックドライバー
- 最大利用時間6時間(ANC OFF)、合計24時間再生
仕様・スペック
- Bluetoothバージョン:5.2
- チップセット:Qualcomm 3046
- 対応プロファイル:HSP,HFP,A2DP,AVRCP
- 対応コーデック:aptX-Adaptive,aptX,AAC,SBC
- 通信範囲:10M
- ドライバー:12mmダイナミックドライバー
- 通話用内蔵マイク:高感度MEMSマイク*2(片側)
- 本体寸法(LWH):602445 mm(ケース込み)
- NET;約4.5g(イヤホン/片側) 約36.8g(充電ケース+イヤホン両側)
- 防水規格:IPX4
- ノイズキャンセリング:ANCノイズキャンセリング、cVc8.0通話ノイズキャンセリング
- バッテリー容量:280mAh(ケース) 40mAh*2(イヤホン)
- 最大再生時間:約6時間(ANC OFF)約5時間(ANC ON)
- 約24時間(ANC OFF)約20時間(ANC ON)
- イヤホン本体 充電時間:1~2時間
- 充電ポート:USB Type C
SOUNDPEATS Air3 Proレビュー
それではレビューしていきます。
外観・デザイン:一部に強烈なこだわりを感じる
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マットな表面、柄なしミニマル -
背面はリセットボタンのみ -
SOUNDPEATSロゴ。印字ではなく彫り込みなのがポイント -
底面は充電用USB-Cのみ -
底が丸いので自立せず。取り出しやすさは確保されている -
きらめくSマークがタッチ操作の検知域 -
最小公倍数的な楕円形ハウジングのカナル型 -
誰の耳にもフィットする丸いフォルム -
黒い穴はマイク
マット加工が施された黒がベースのデザイン。
銀色のSOUNDPEATSロゴがワンポイントになっており、ゴージャスながら落ち着いた印象です
-
規格・認証の印字はこんなところにある
特にケースの作りにデザインのこだわりを感じます。
具体的には、
- ケースのふたのロゴの彫刻
- 各種規格や認証マークの印字場所
の2点。
特に認証マーク等の印字を「前歯の裏」のような見づらいスペースに持ってきた点はびっくり。こんな完全ワイヤレスイヤホンは初めて見ました。
「規格や認証マークの印字はデザイン上邪魔者なんだ。絶対に見せたくないんだ」
という、デザイナーのこだわりを感じます。
重さ・大きさ:標準的
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172cm男性の手と比べると小柄に見える -
実測36.9gはかなり軽いほう -
本体の重さ4.7gは標準的な範囲
サイズ感は全体的にコンパクト。
重さは、ケース含めた全体は標準より少し軽めで、本体そのものは標準の範囲内かなと。
コンパクトさや軽さを売りにしているわけではないので、こんなもんなんだろうと思います。
Bluetooth接続:aptX Adaptiveにまで対応
-
aptX対応。接続先が対応していればAACやaptX Adaptiveも可能
初回ペアリング、ペアリング後の接続、接続の安定性、どれを取っても不備がありません
特筆すべきは対応コーデックの幅が広いこと。
特にaptX Adaptive対応である点は評価すべきでしょう。
6000円台の完全ワイヤレスイヤホンではなかなか見ません。
とはいえ、再生デバイス側が対応している必要があります
装着感:問題なし
装着感は普通です。
イヤーピースさえフィッティングさせれば特に問題なくホールドします。
イヤホン本体の形状が原因で装着しにくいと感じることはありません。
操作性:少しタッチ感度が強め
タッチ操作です。主な使い方は以下の通りで、不自然感はありません。
- 右/左1回:音量アップ/ダウン
- 右/左2回:再生/一時停止
- 右長押し:曲送り
- 左長押し:ANC切替
- 左3回:ゲームモード切替
ただ、曲戻りができない点と、タッチ感度が強く誤爆の可能性が心配なのは気になります。
スピーカー音質:ボヤっとする
第一印象は、なんかぼやけているなあ、です。
音量バランスは高=中=低。弱ドンシャリ傾向の多いSOUNDPEATSにしては珍しいフラットサウンドです。
「ぼやけているなあ」と感じた理由は、中音域の濁りにあります。
中音域
ボーカルこそ1歩手前で聞こえやすいものの、その他の音が後ろで丸まっている状態なのです。すりガラスの向こう側のモノを見ているような。
たとえば、ピアノと弦楽器の音色が重なっているとき、それぞれの音色を聞き分けるには相当耳を澄ませなければなりません。
音色の一つ一つを分解しながら聞くタイプの自分にとってはちょっと耐えられない丸まり具合です。
「音の粒度感や分解能の高さがSOUNDPEATSの音のよさ」と期待していた分、残念感がぬぐえません。
低音域、高音域
一方で低音域と高音域の粒度感と表現力はすばらしいです。
高音域は360度きちっとキラキラしてくれますし、低音域はバスドラムの鳴り方が秀逸。
バスドラムでいうと、地面を揺らすようなブーム感の中に、まるでスナップが効いたビンタのようなスパーンとしたハリがあり、メリハリがよく、聞いてて小気味が良いです。
ここはSOUNDPEATSの音作りのいい面がふんだんに発揮されています。
総じて
結果として、あらゆる音域の音色を重ね合わせたような音に厚みのある曲は、中音のぼやぼや感が先行し、とても聴きづらくなります。
一方、バスドラムとベース、シンバル、中音域は1〜2つの音色からなるシンプルな楽曲は得意。
具体的には、きゃりーぱみゅぱみゅのような音圧ゴリゴリ音楽は苦手ですが、Amazon MusicのWorkout PulseのプレイリストにラインナップされるシンプルなR&Bなんかはめちゃくちゃキレイです。
イコライザで中音域を弱めに調整すればバランスが取れると思います。
ANC性能:しっかり効果あり
-35db相当のANC。
実際に使っていると看板に偽りなしです。
たとえば、
- 洗濯機がゴウンゴウンと回る音
- キーボードの底打ち時の低音
は、ほぼ聞こえません
一方、高音はある程度聞こえてきます。
たとえば
- キーボードのカチャカチャ音
- 机を爪でトントン叩く音
あたり。
ただ高音については、過去に使ったANCイヤホン全般同じ。
高音が通りやすいのはANCの宿命なのかもしれません。
マイク音質:値段なり
マイケルはそこまで期待してはいけません。
そもそも集音能力が低め。 ANCや音質にコストを振り分けた結果、マイク自体はそこまでコストをかかっていないのかもしれません。
とはいえ、そこまでレベルが低いわけでもなく、日常的なLINE通話などで使う分には十分な水準です。
あくまで、マイク音質の良さをアピールしているものと比べるとそこまででもない、というだけ。
そもそも、マイク音質に期待してSOUNDPEATS Air3 Proを選ぶ人は数少ないと思うので、マイク音質がイマイチだからと言って買うのやめる理由にはならないと思います。
電池の持ち:やや弱め
-
充電時はLEDが緑に光る。急速充電、ワイヤレス充電は非対応
連続再生時間
本体のみで、ANCオンで最大5時間、ANCオフで最大6時間。
ケース込みやと最大30時間。
2021年冬モデルのラインナップと比べると、電池の持ちは短めです。
軽さ重視でそうなっているのかもしれません。
急速充電やワイヤレス充電対応
対応していません。通常速度のUSB-C有線充電のみです。
6000円台のANC対応完全ワイヤレスイヤホンに充電まわりの機能性まで求めるのはやりすぎだと思うので、対応なしでも違和感はありません。
防水・防塵:水しぶきなら大丈夫
IPX4等級の防水を備えています。
汗やシャワー、ちょっとした雨などの水しぶきレベルなら大丈夫ですが、豪雨や水ポチャには要注意、くらいの水準。
なので、基本的に濡らさないように使うのが正解。IPX4は、間違って濡れたときの保険くらいに思っておくと良いでしょう。
保証:12ヶ月
SOUNDPEATS 製品には標準で1年間の保証が付きます。
SOUNDPEATS Air3 Proももちろん1年保証。
初期不良の際もしっかり対応してくれるのは心強いかなと思います。
実際に使ってみた感想
-
自宅デスクで使ってみた
良かったところ
- 分解能の高い高音
- スナップの効いたハリの良い低音
- 強いこだわりを感じるケースデザイン
悪かったところ
- ボリュームが大きいのに焦点のあわず悪目立ちする中音域
- 電池の持ちが短め
SOUNDPEATS Air3 Proはこんな人におすすめ
まとめ:イコライザ調整必須
総合評価:
フラットサウンドへのチャレンジ意欲が裏目に出ていて非常にもったいない、という印象です。
高音と低音はすごくいいんです。大事なことなのでもう一度言います。高音と低音はすばらしいです。
なのに、ボーカル以外の中音域の旋律がすりガラスの向こう側状態、かつ音量が大きくて悪目立ちした結果、高音と低音の良さを打ち消しているんです。なので、非常にもったいない。
一方、ANC性能や外観など、音質以外はハイレベルに仕上がっています。(音作りのコストを削ってそっちに振った?)
なので、音質だけイコライザ調整すれば十分使っていけると思います。
以上「SOUNDPEATS Air3 Proレビュー | ぼやけた中音域をイコライザ調整でどうにかするANC対応完全ワイヤレスイヤホン」でした。